加藤文博 ワンポイント・アドバイス

 1:ターンは内足荷重だ
ターンは「リーンアウトで外足荷重」と思い込んで、未だに曲がることに悩んでいる人が多い。初期のトライアル教科書ではそう書かれていたものだが、今も昔もバイクの曲る原理はただ一つ。車体はねかした側へ曲っていく。そしてねかすには内側のステップをふみこめばよい。内足荷重→内側へ車体がリーン→内側へハンドルが切れる、の順。リーンした車体とバランスをとるため体はリーンアウトとなるが、このフォームを見て「外足荷重」と考えるのは誤り。外足は結果そえているだけ。内足をグイと踏み込まないと積極的ターンは始まらない。

 2:体で覚えるより、理屈で覚えろ
とにかくスポーツはすべて体で覚えなければと、がむしゃらに練習をする人もいるが、トライアルに関していえば、理屈を考えながら走るほうが、はるかに上達は早く、危険は少ない。テクニックにはすべて上達の段階をふんだ順序というものがあるし、お互いに関連もある。いきなり難しい技に挑戦するよりも、上級者の指導や本書などを参考に、系統だった練習をしてほしい。上がれない時は、上がれない理由を分析してみるだけの研究心が欲しい。度胸などという言葉はトライアルには最も縁遠いものと知っておいてもらいたい。

 3:複合技術は分解して練習しろ
トップライダーが行うと、一見シンプルに見えるテクニックも、実はいくつもの基本的な技が複合して瞬間的に行われているものが多い。見よう見まねで練習するより、「部分技術」に分解して練習したほうが上達が早い。まっすぐに静止する練習、静止から前へ進まずフロントを高く上げる練習。上げたフロントを少し右か左に振る。少しずつ振る角度を大きくしていく。振り向きざま丸太を越える。振ったフロントを高い壁にそって横に走らせる・・・といった具合に次々にハイレベルに到達していく訳だ。

 4:後一輪で走るものと心得よ
バイクには二つのタイヤがついているが、あるレベルを超えたトライアルでは、前輪は後輪をうまく走らせるための補助輪というくらいの意識を持っていいと思う。フロントは部分的に地面に触れて、後輪をよりよいラインに導くために働かせるもの。従ってフロントを自在の高さ・タイミング・方向に浮かせるという練習を積んでいかないと、上級者への道は開けない。ウィリーで長く走れる必要はないが、そうした一輪走行感覚というものは上達には欠かせないものとなってくる。

 5:アクセルよりボディのコントロールが先
自分のからだを前後左右にどう動かして、マシンをあやつるか。上りでのからだの先行、下りでの腰の引き、ターンでのリーンアウトなど、正しく大きくボディアクションを行うことを、アクセルワークに先だって学ぶのが上達の早道だ。それが十分にできるようになってから、アクセルでマシンを立てなおすなどを補助的に使うくらいの気持ちで練習するといい。初心者にみられる共通の欠点は、からだをほとんど動かさず、アクセルコントロールのみにたよってマシンをあやつろうとしていることである。最近、自転車による練習が注目されている理由の一つはここにある。

 6:まず足をついて走ることから始めろ
とにかく足をつかないで!と考えて練習する人も多いと思うが、新しいテクニックや新しい地形に向かっては、まず1回でも2回でも足をついて走る事を考えたほうがいい。1回足つきができるようになってからその足を次ぎはつかないように行く練習というのが危なくもなく、かつ実戦的である。クリーンができなければすぐ5点になるより1点2点でうまく足をついて通過できるようになること。上手な足のつき方というのは極めて大切なテクニックなのだから、足をつく練習というのは欠かせない一科目だ。

 7:スピードは遅い方からトライ
ハードなステアケースでは、抜重のできない人ほどスピードで登ろうとする。しかし前輪の激突、後輪を大きく跳ね上げての真下への落下、ともに大変危険である。むしろ底を打つくらいの低いスピードからトライして、体全体のアクションを確実に大きくすることから始める。そして少しずつスピードを上げていって、適正なスピードを学びとるほうが、安全でもあり上達も早い。早すぎるほうから落としていくのではなく、遅すぎるほうから早めていって練習することをおすすめしたい。

 8:上達するほどハンドルは低目に
かつて6インチものハンドルを使っていたトライアルマシンも、最近では4インチ4.5インチといった低いものが主流になっている。ハンドルを引き上げるようなテクニックは、低くないと使えない。また上りが急になるほど、高いハンドルではバンザイになっておさえがきかない。トライアルでは何よりも上りのセクションが多いから、平地で楽な高いハンドルでは具合の悪いことが多いのだ。上りのにが手な初心者は一度ハンドルの高さを上級者にチェックしてもらうといい。

 9:後輪荷重の小さい最新マシン
かつてはフロントを浮かせやすくするため前輪荷重を小さくとったものだが、最新設計のマシンはむしろ逆にリアを軽くする傾向にある。前輪が軽いと、上りですぐ浮き上がるのでアクセルを開けられないばかりか、ステアでは逆に後輪がひっかかって残りやすい。最新マシンはずいぶんエンジン位置が前寄りになっているはずだ。従って十分な後輪グリップを得るために、体重をしっかりリアにかけること。サスの反発力やハンドルのうしろへの引きなどによってフロントを自在に軽くする技術が求められる。

10:タイヤはどこで地面に触れるのか
トライアルの場合、いつもタイヤの一番下が地面に触れるとは限らない。前輪も後輪もそれぞれに前や後の部分で、土や岩やさまざまな障害物に触れる。どの部分が接地しているかによって、マシンの挙動は当然ちがってくる。例えば急な坂やステアケースの下りはじめ。タイヤはかなり後の部分で接地している。この状態は方向性が不安定でハンドルが切れ込みやすい。そのことを知っていれば、地形を見てここはハンドルをしっかりホールドして!というふうにライディングの作戦にも役立つ。

11:上がりの失敗は止まった瞬間に処理しろ
ステアケースなどの上りの失敗を、どう無事に安全にするかもテクニックのうち。上ろうとして上り切れず下に落ちるという時は、その間に必ず一瞬ストップする時があるはずだ。この一瞬にマシンをねかせるなり、放すなり、上から仲間に引き止めてもらうなりの判断と処理をすること。何もできないまま下に落ち出してからでは、処理のしようがない。登り切れずに止った瞬間ならどちらへも慣性が働いていないから、最も処理がしやすいということ。ハードな所にアタックする前に知っておいて欲しい。

12:ハードな練習は仲間といっしょに
ひとりでこっそり練習して上達を!という時は、やさしく安全な場所でくり返しくり返し練習すべきことがいくらもある。ハードな地形にトライする時は、必ず仲間といっしょに行くこと。上りきれずに落ちると危いような場所では、確実性がつくまで上で二、三人に受け止めてもらうようにしたほうがいい。トライアルの練習場はたいてい人の通らない山の中なので、万一ケガをした時に知らせに行ってくれる人だけでもいるようにしないと、とり返しのつかないことになる。

13:多くの動作ができるようゆっくり走れ
どんなすばやい動きをしようとも、人間のアクションにはそれなりの時間がかかる。「どうしてもそれだけの動作をしないとフロントを浮かすことができない」といった時その動作を行うだけの時間をかせぎ出す走りが必要なこともある。難しいセクションをあえてゆっくり走るということの中にはそうした計算も働いているのだ。マシンのスピードはゆっくりでも、ライダーは極めて忙しく、そのかせいだ時間をいっぱいに使って、必要な動作を行っているわけだ。ビュンと一気にいけるセクションでは、むしろライダーの動きは少ない。

14:バイクと体のVバランスをとれ
エンジンは止めたままでいい。バイクのハンドルを引いて後一輪で直立に近く立ててみよう。理論上、全く何の支えがなくてもひとりで立っていられるポジションがあるはずだ。ステップに人間が乗っても同じ。横から見て、マシンと体のVバランスで完全につりあう位置があるはずだ。ウイリーで長く走ろうと思ったら、このポジションを覚えるこ。前に走るからやや前傾するとして、これなら最小のアクセルでゆっくり走れる。前が落ちそうなら少しアクセルを、後に落ちそうならリアブレーキを少しきかせれば、そのまま走り続けられる。

15:縮める、伸びるの反発力をつかめ
どうしても前輪がうまく上がらない初心者は、フロントフォークを一旦縮めていないからだ。ステアの上に前輪を上げることばかり考えて、早くから腰が引きっぱなしになりやすい。前輪を上げる前には一旦沈ませること。その反発力を利用すると、少ないボディアクション、少ないアクセルワークで高く上げることができる。これは初心者だけでなく、低い位置にある前輪を上げたり、壁にあててのフローティングターンなどにも必要な重要なテクニック。サスは伸縮両方にせいいっぱい利用することを覚えて欲しい。